9月27日の報道に端を発した関西電力の裏金問題は、関電がこれまでに森山栄治元高浜町助役(故人)から3億円を超える金品を受け取っていたこと、さらに同氏が相談役など務めていた吉田開発やメンテナンス会社、警備会社などが、この5年間に関電から200億円を超える仕事を受注していたことなどが追加報道で暴かれた。さらに、これらの会社からは森山氏を通さずに直接、関電の会長や原子力部門長らに金品が贈られていたことも明らかになった。関電に還流した裏金は3億円どころか、それをはるかに超える額に達していた。
関電、5年で200億円超発注/元助役が役員つとめる地元企業へ
9月27日の報道に端を発した関西電力の裏金問題は、関電がこれまでに森山栄治元高浜町助役(故人)から3億円を超える金品を受け取っていたこと、さらに同氏が相談役など務めていた吉田開発やメンテナンス会社、警備会社などが、この5年間に関電から200億円を超える仕事を受注していたことなどが追加報道で暴かれた。さらに、これらの会社からは森山氏を通さずに直接、関電の会長や原子力部門長らに金品が贈られていたことも明らかになった。関電に還流した裏金は3億円どころか、それをはるかに超える額に達していた。
国会議員らは、関電に国会への招聘や野党合同ヒアリングへの出席を再三要請しているが、関電は一切拒否している。所管庁の経産省は出席要請を関電に伝えるとは言うものの、同社を庇っているのか出席を迫ってはいない。
経産省に対する野党合同ヒアリングはこれまでに3回開催されたが、同省は「今年9月の新聞報道まで関電の金品の授受をまったく知らなかった」「関電には報告聴取を命令したのでその報告待ちだ」との一点張りの答弁だ。
関電は第三者委員会(但木敬一委員長)を設置して調査・報告を行うという。報告書は当初は12月までにまとめるとしていたが、調査対象が多いことを理由に年明けになると見られている。経産省はこの報告を待ち続けたいというわけだ。
そんな中、10月31日に「国会エネルギー調査会(準備会)」が開かれ、経済学者の金子勝氏と元経産省職員の古賀茂明氏を迎えて、経産省に対する追及が行われた。同会は国会でエネルギー基本計画などを審議する正式な委員会の設置を求めて結成された超党派の議員の集まりだ。金子氏は「当事者が設置する委員会は第三者とは言えない、経産省が第三者委員会を設置するべきだ」と主張。この要請は野党合同ヒアリングでも行われているが、経産省は無視し続けている。また、金子氏は世耕経産大臣(当時)が2012年~15年の間に森山氏が相談役を務めるメンテナンス会社「柳田産業」から600万円の献金を受けていたことも指摘。裏金は関電に還流するだけでなく、経産省にも回っていたことになる。また、古賀氏は金品が国会議員にも配られているであろうことを示唆した。
10月31日に開かれた「国会エネルギー調査会(準備会)」で、経産省を追及する金子勝氏(中央左)と古賀茂明氏(中央右)
経産省から高浜町へ4人が出向/その期間にプルサーマル導入
関電は10月2日の記者会見で、昨年9月11日付、社内の「調査委員会」がまとめた「報告書」を公表した。森山氏の特異な性格を強調し、彼に責任があるかのような書き方になっているが、それはともかく、この報告書を作成した「調査委員会」がどういう経緯で何のために設置されたのかは不明だ。会長ほか原子力部門の主要人物が金品を受け取っていたのだから、会長らが社内向けに設置したとは考えにくい。
金沢国税局は昨年、関電に査察に入り、受領の明瞭なものに対して修正申告を求め、納税させた。国税局が調査を指示したとも考えにくい。
08年から現在に至るまで、経産省から高浜町へ4人が出向していることを、10月11日の衆議院予算委員会の国会質疑で菅原一秀経産大臣(10月25日辞任)が認めた。08年は強い反対の中でプルサーマル(※1)導入が計画されていた時期だ。国策としてこれを進めたい経産省、事業者として計画している関電、そして受け入れる高浜町(森山元助役)との連携の中で、高浜原発3号機への導入が10年に強行された。そんな密接な関係がありながら、昨年1月に吉田開発に国税局が調査に入り、森山氏個人や関電にも調査が入ったことなどの一連の動きを、17年からの出向者がまったく知らなかったというのはありえない。経産省はかたくなに否定しているが、同省に報告書を提出するために設置されたと考えるのが自然だ。
※1 プルトニウムとウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を原子力発電所(軽水炉)で使用すること。ウラン燃料に比べて経済的に割高なうえ、毒性の強いプルトニウムを燃焼することで生じる危険性もある。また、原子炉の冷却機能を失う事故発生時に、炉心溶融の危険性が高い。
10月24日に「関電の原発マネー不正還流を告発する会」(※2)が発足、市民サイドからの徹底追及の運動がこれまでの動きに加わった。告発人は1ヵ月も経たないうちに1000人を超え、12月中に東京か大阪の地検に告発する計画だ。
(伴 英幸)
(2019年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 372号より)
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
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