8月12日は「世界ゾウの日」(2012年に制定)。けれど、昨年のゾウの日から、この1年でガラッと世の中が変わってしまった。この1年は特に、気候危機(温暖化)による影響が増え地球の悲鳴を強く感じられる年だったと思う。異常に暑かった北半球の夏、オーストラリアの大火事、雪不足の暖冬、異常な大雨や雹など、世界中でぐっと温暖化の影響が身近になったような気がする。
*この記事は『ビッグイシュー日本版』388号(2020年8月1日発売)に掲載の『滝田明日香のケニアだより』内コラムでNPO法人アフリカゾウの涙 共同代表 山脇愛理さんに寄稿いただいた記事です。
アフリカではあらゆるところで干ばつと大洪水が繰り返された。
ジンバブエとザンビアの国境には世界3大瀑布のひとつ、ビクトリアフォールズがあるが、異常な乾季で一本筋の水流を残して昨年は異例にも干上がってしまった。
ケニアをはじめアフリカ各地では自然の雨のサイクルに頼って農作物を育てる自給自足や小規模農業がほとんどのため、異常気象で人々はもろに影響を受けている。
農作物が育たない、育っても野生動物に食べられる。すると、他の現金収入を求めて森林伐採をしたり密猟にかかわったりする人が増えてしまう。
気候危機による影響が深刻化する中、私たちNPO法人「アフリカゾウの涙」もその影響を今まで以上に視野に入れないと、人間と野生動物と自然環境との共存を成り立たせる活動ができないと感じている。
COVID-19の影響で、人種や国境は関係なく世界中が打撃を受けている。
コロナウイルスは格差の大きいところや医療が腐敗しているような人間社会の弱いところにつけ込んで広まった。一方で皮肉なことに、人間の活動が世界中で静止したことによって、宇宙から見た地球の空は澄んで綺麗になった。いかに私たち人間の活動が地球に負担を与えているか……まるで限界にある地球が私たちの足を強制的に止めたようにも思えてくる。
また私たち人間の生活を改めて考える機会にもなった。コロナウイルスの影響で多くの人がテレワークし続ける中、使わなくてもよい消耗品が明らかになってきた。大量の紙やプラスチックのファイル、印鑑などあらゆる文具。もはや縁起物・フォーマルの印として必須とされてきた個人や会社で“象牙の印鑑”は使う必要性がなくなったのではないだろうか。
2020年の「世界ゾウの日」に改めて地球の現状と向き合い、人間、野生動物、自然環境との共存に向けて引き続き具体策を追求することが私たちの使命だと感じている。
(山脇愛理/アフリカゾウの涙 共同代表)