クローゼットには溢れるほどの服があるのに、週末に出席する予定の結婚式に着ていく服がない……買いに行かなくちゃ。でも「どうせ数えるほどしか着ないし」安さが一番、質は二の次、なんてことになっていないだろうか?
ひと昔前までは新作アイテムが店頭に登場するのは季節の変わり目だったが、トレンドが目くるめく変化する「ファストファッション」が台頭する昨今は、ファッションブランドのチェーン店には数週間毎に新作アイテムが届く。だが、安く売られているものは当然ながら作るのにもお金がかけられていない。そのため、大量の資源の無駄遣い、染料などによる環境汚染、低賃金諸国での搾取をもたらしている。
「古着をサブスクで楽しむ」ドイツ国内で4店舗展開中
そんな風潮に抗うのが、ドイツで衣料リユースショップを展開する「クライダレイ(KLEIDEREI、 ドイツ語で「洋服を借りる」の意)だ。「ファッション・シェアリング」をコンセプトとし、品揃え豊富な店内には、(主に)女性客向けの古着、靴、アクセサリーが並び、定額でレンタルできる。

月額29ユーロ(約4,600円)で4つのアイテムを、39ユーロ(約6,200円)で6つのアイテムをレンタルできる。子ども、学生、実習生向けの割引もある。これら4〜6アイテムは、何度でも他のアイテムと交換できる。レンタルしたおしゃれなジャケットやトップスを自分用にしたいと思ったら、購入することもできる。クライダレイは従来型の古着屋でもあるのだ。サブスクリプション会員が購入する場合、最大20%の割引が利く。
店内の商品は寄付されたものばかりで、店側が買い付けることはない。寄付者はサブスクリプションの初月料金、または購入時に使える20%割引券がもらえる。
2022年9月、シュトゥットガルト西部にもクライダレイの店舗がオープンした。店主であるカリナ・ブライシュ(37歳)が歩んできた人生は、店頭に飾られた絞り染めドレスのように色鮮やかだ。薬学系の技術アシスタントとして訓練を受け、10年間薬局で働いた後、美術史で修士号を取得。その後、本当に自分の関心が向くことをしたいと思っていた。ファッションはずっと大好きで、フリーマーケットや古着屋で服を買うことが多かった。
「服をレンタルできたらいいのに」と考えていた頃、そんなコンセプトで経営しているクライダレイという店があるよと友人が教えてくれた。すでにケルン、フライブルク、ベルリンに店舗があった。資源を大切に使いながらファッションを楽しむ、というビジネスモデルに魅了されたブライシュは、クライダレイ本社に連絡を取り、フランチャイズ店を任されるに至った。

店の大きな窓には、「You have style, you borrow clothes(服を借りて、おしゃれを楽しむ)」というスローガンが大きな文字で描かれている。約90平方メートルの店内には、クラシック、スポーティー、エレガント、レトロ、ヴィンテージといろんなスタイルの古着が並ぶ。「メインは普段着です」とブライシュは言うが、フォーマルな服もあれば、地下には二箱分のマタニティ用の服もあり、お願いすれば店頭に出してくれる。
公正なファッションを謳うアームドエンジェルズ(ARMEDANGELS) やノードリヒト(NORDLICHT)* などの新作も一部扱っているが、キズあり、返品された商品、展示で使用した商品に限られ、レンタルのみで購入はできない。
▼「値段を自分で決める」スタイルのフリマを開催することもある。(Instagramより)
若い女性を中心に広がるファッションの減速ムーブメント
店内は女性向け商品が中心だ。「男性のファッションはすでにサステナブルなことが多いです」とブライシュは言う。「女性とは消費の仕方が違い、同じ洋服を長い間着て、モノを簡単に手放さない傾向がありますから」。だが、男性も女性客の付き添いなどで店を訪れることがあるので、少し前からは男性用アイテムも一部並べるようにしている。
開店から2年が経ち、「順調です。この店のコンセプトがどんどん受け入れられているように思います」とブライシュは言う。サブスクリプション会員は現在95名だ。「ファッションを実験的に楽しみたい女性にぴったりのコンセプトで、25〜35歳の若い女性が中心です」。レンタルの工程を踏まず、すぐに購入する客は多くがもう少し年齢が上の世代だ。きっと、自分の好きなものがよりはっきりしているのだろう。
サステナブルであることを重視する客も多いが、ただシンプルにお手頃な価格で洋服を買いたいだけの人もいる。「この買い物が環境を守ることにつながっているのです、とミニレクチャーをすることもあります」とブライシュは話す。
一つのアイテムを楽しむ期間を1年から2年と倍にすることが、二酸化炭素排出量の削減につながる。ファストファッションよりもスローファッションへ。クライダレイが打ち出すファッションの「減速」はさらに進む。というのも、ブライシュは自分の使わなくなったファッションアイテムを、シュトゥットガルト拠点のストリートペーパー『トロット・ヴァー(Trott-war)』が運営する衣服バンクに寄付しているので、生活困窮者が状態の良い古着を無料で手に入れることもできているのだ。
クライダレイ公式サイト
https://kleiderei.com/
Instagram
https://www.instagram.com/kleiderei/
By Karin Scharschmied
Translated from German by Lisa Luginbuhl
Courtesy of Trott-war / INSP.ngo
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