フィンランドは長らく、ホームレス対策でヨーロッパを牽引する国の一つだった。ホームレス人口は減少傾向にあり、「ハウジング・ファースト」モデルを世界に広めた国でもある。ところがこの数年、住まいをなくす人が増加、2025年には前年度より20%増と、統計を取り始めて以降、最も高い伸び率となった(特に若者と女性で率が高い)。
福祉国家の社会保障制度を研究してきたフィンランド保健福祉研究所のマネージャー、パウラ・サイコネンは、「このままでは取り返しのつかないことになるのではないかと本気で懸念しています」と現状を憂慮し、住宅の提供にとどまらず、人々が社会の隙間からこぼれ落ちないよう社会システムを機能させなければならない。それこそが福祉国家フィンランドの中核であるべきだと主張する。
不景気で社会福祉のニーズが高まるも、各種手当は削減傾向
「ホームレス問題は長期的な事情の結果であって、一夜にして起こるものではありません」と、家を失う状態に陥るのは究極の状況であって、問題が露呈する頃には状況はかなり悪化しているとサイコネンは指摘する。
現在のフィンランドは景気後退の終わりが見通せず、失業者の数も増え、社会福祉のニーズが高まっている。にもかかわらず、社会扶助や住宅手当は削減される一方で、経済的苦境を深める世帯が増えている。
さらに、社会福祉や医療サービスの費用が上昇しているため、病院に行くのを控えたり、家賃を払えなくなる人が増えている。「それが人々の選択なのです。何も、急に家賃を丸ごと支払わなくなるわけではなく、どうしても一部しか払えない、あるいは期限までに払えないことが続き、問題がどんどん膨らんでいくのです」。
立ち退きの理由で最も多いのが家賃滞納だ。家賃滞納の履歴があると新しいアパートを見つけるのが難しくなるため、次第に立ち行かなくなり、最悪の場合、家を失うこととなる。「経済的に苦しい状況にある人が、どんどん負のスパイラルに取り込まれるのです」
フィンランドでは国営住宅建設センターが自治体からデータを収集し、ホームレスに関する年次統計をまとめている。ホームレス増の主因は、社会保障制度の変更に加え、昨今の家賃水準にケラ(フィンランドの社会保険機関)の住宅費補助が追いついていないことが背景にあるようだ。

Photo by Veera Vehkasalo
社会保障が非常に大きな役割を果たす
家を失う人の増加が加速している理由について研究データはまだ出揃っていないが、社会保障費の削減がその一因であるとサイコネンは確信している。「現政権下で多くの変更がなされ、社会保障はどんどん削減され、それらが積み重なった結果です。度重なる費用削減の標的となるのは決まって、すでに困難な状況にある人たちなので、より深刻な混乱がもたらされます」
ホームレス問題への予防および対策において、適切な社会保障が「非常に大きな役割を果たす」とサイコネンは断言する。この場合の社会保障は金銭的給付だけを指すのではなく、広範な社会福祉サービスや医療サービス、住宅相談なども含む。「個々人の状況に合わせた支援が必要です。住宅手当は多くの人に該当しますが、中には所得保障が急務な人もいます。公共サービスの充実によって、状況が悪化するのを防ぐことができるはずです」
困難な状況にある人々の給付金が削減または制限される
今春より所得支援への変更が施行され、多くの人々の給付金が削減または制限される。給付金削減の対象となっているのはすでに非常に困難な状況にある人々たちだ。これは「恐ろしいことで、社会的弱者にとってはなおさらです」とサイコネンは言う。経済状況の悪化により雇用が減り、難しい状況であることは百も承知だが、「でもこんなときこそ、状況が改善した際に、国民が働き、生活を維持できる状態にあることを明確に保証すべきです」と言う。
医療がそうであるように、問題を慢性化させるよりも早い段階で手を打つ方がずっとコストも抑えられる。いったん家を失ってしまうと、状況改善により長い時間がかかる。「人が崖から落ちる状況は、長い目で見ると、決して他人事ではありません」
By Veera Vehkasalo
Translated from Finnish via Translators Without Borders
Courtesy of Iso Numero / INSP.ngo
アイキャッチ画像:bauwimauwi/iStockphoto
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