(2007年7月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第76号より





家は日曜大工で建てられる




20年以上前、日曜大工の延長でマイホームを建ててしまった藤岡等さん。そのマイホームづくりは、今も続いている。素人向きの2×4工法と、自分で家を建てることの醍醐味を聞く。







MG 7080加工





安いだけじゃない、こだわるところにはお金をかける醍醐味



大阪市内から北に車で1時間弱。木々の緑が眩しい山道を走り、峠をこえると、そこはもう周囲を山に囲まれた小さな町(豊能郡能勢町)。その住宅街に入ると、ひときわ目立つ戸建て住宅が見えてくる。

アーリーアメリカン調の大屋根構造。屋根には屋根裏部屋の存在を連想させるドーマー(屋根窓)がついていて、玄関の扉はハリウッド映画に出てきそうだ。離れにある中2階の仕事部屋や赤煉瓦を敷いた中庭には、さらに家主のこだわりが凝縮しているようでいて、訪れた者をワクワクした気持ちにさせる。

P6210004

日本ののどかな山の風景とはかけ離れた、このオシャレな家は、実は家主の手づくり。つまり、日曜大工で建ててしまった家なのだ。




「ローコストでマイホームを建てたいとか、屋根裏部屋がほしいとか、いろいろ理由はありましたけど、要するにモノづくりが好きだったんです。陶芸などを自分でつくりたい人っているじゃないですか、あれと同じです」と家主の藤岡さん。




手づくりマイホームのよさや楽しさがわかるのは、なにも見た目のカッコよさだけではない。パッと見ただけではわからない「こだわり」が随所にある。


例えば、あまり日本では見かけない窓。ほとんどすべての窓は北米製の木製ペアガラスが使用され、二重ガラスになっているため断熱効果が高く、どんなに寒い日でもいっさい結露しない。日本でよく使われている窓はアルミサッシの1枚ガラス。藤岡さんによると、「性能的にも値段的にも最低のもの」なので、結露するのも当たり前なのだ。また、お風呂の壁には長年使用しても腐ったり、カビが生えない、水に強いアメリカ杉が使用されている。


なにより家の品質は自分で建てたからこそ信頼できる。最近でこそ、あらゆる建物で手抜き工事が話題になっているが、自分が住む家を骨組みからつくるとなると、手抜きはありえない、と藤岡さん。「私たちは素人だから、最初からマニュアル通りで『ココに釘5本を打つ』と書いてあれば、必ず5本打つんです。でも、業者の場合は大手の受注元から値段を叩かれていたりするから、見えないところで手を抜くことだってある」


「自分で家を建てたっていうと、すぐに普通の半値で家を建ててスゴイねって、経済的な面ばかり注目されるけど、私たちは逆に性能のところにお金をかけてるんです。それもアウトレット建材など独自のルートで安く手に入れた明朗会計。それが、手づくりマイホームの醍醐味」と話す。




後編に続く