3世代先も幸せな地域でいるには何が必要か?~「幸せな地域づくり」のアイデア草郷さんの講義・市民ワークショップから(5)

草郷さんの講義から(4)を読む

関西大学社会学部教授の草郷孝好さんの講義のなかで行われた、市民によるワークショップで出てきたアイデアと、関連するビッグイシューの特集を紹介します。

*この記事は、地域の課題解決を担う人材を育成することにより地域の魅力を高め、地域の未来を創造していくことをめざした「とよなか地域創生塾」の公開講座の2回目「幸せな地域社会をめざすアクション・リサーチの試み~市民協働と信頼構築のカギは何か」の講義をもとにしています。

3世代先も幸せな地域でいるには何が必要か?を市民が考えてみた
講義の最後は、草郷さんから「3世代先も幸せな地域でいるには何が必要でしょうか?」そして「それに対し、自分たちができることは何でしょうか」というお題が出され、グループで意見交換しました。

このグループは、100年先を見据えて「子どもが参画するまちづくりが必要」かつ「大人のコミュニティがなく横の連携がない状態を改善する」と発表。

このグループは、幸せな地域でいるためには、すべての人に「居場所」が必要と主張。

料理自慢の人が朝ごはんを提供したり、必要なものを交換しあったりする場所をもつことで、格差の是正ができれば・・・という意見が出ました。

編集部より:
居場所としての食堂に興味がある方には、『ビッグイシュー日本版』307号に掲載の特集「どこにもない食堂」がおススメです。 50分の手伝いで1食分が無料になる「ただめし」券を発行、〝誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所〟をつくろうとする「未来食堂」。 「コムカフェ(comm cafe)」(大阪・箕面)は、外国人市民が日替わりでシェフとなり、多文化な家庭料理を提供。素の自分でいられて、仲間ができる居場所でもある。全部で4つの食堂の、起業と日々の経営に込められた思いを聞いています。

このグループは「図書館」を軸にあたたかみのある場所づくりができないか、という案や、地域にある音大に登場してもらって音楽イベントはどうか、などの意見を発表しました。

編集部より:
『ビッグイシュー日本版』304号特集「にぎやか、問題解決―いいね!図書館」では、子どもからお年寄りまで誰もが無料で使える公共図書館。今、近隣社会の課題解決のための情報拠点や人々の居場所として、にぎやかな活気あふれる場所へと変身しつつある図書館をクローズアップしています。

こちらのグループは、「みんなが活動できること」として、いろんな世代が一緒にできる「緑を増やす活動」が提案されました。

編集部より:
みんなで取り組める「緑を増やす活動」に興味のある方は、『ビッグイシュー日本版』308号特集「都会で畑」がおススメです。生鮮野菜を自給し、野菜を育てる時間をおもしろがり、多様な人と交流できる”都会の畑づくり”の3つの事例を紹介しています。

こちらのグループは、転勤での出入りが多い地域であるがゆえに、「地元愛」を醸成する必要があると主張。市の祭りを一か所ではなく、複数個所で開催しつつ、巡回バスを運行させることでシニア層の生きがいにもつながるのではないかという意見が出ました。

草郷さんは最後にこのようなまとめをされました。

「とにかくつながればよい」というわけではありません。 水俣の場合は強い集落の絆はかえってアダになりました。
また、長久手の「利便性が高い」という評価は、逆に言うと「社会的関係資本が最小化された状態」であるかもしれないということです。

重要な点は、地域の人と地域の外とつながることと、地域の中でも、強いきずなと弱いきずなの人がつながることです。すべての人が強いきずなと弱いきずなの両方を持つことはできないが 強いきずなをもつひとと弱いきずなを持つ人がつながることはできる。
異質な人ほど受け入れる、と意外な展開が生まれるかもしれませんね。

「こうだったらいいのにな」と思うものは、小さくても「自分ならどうできるか」を考え、実行していくことがとても大切です。

草郷孝好(くさごう たかよし)
東京大学経済学部卒業、学生時代から住民参画型の社会経済開発と持続的発展に興味を持つ。関西大学社会学部社会システムデザイン専攻教授。(人間開発論)

※草郷さんは、大学の授業でビッグイシューのお話をさせていただいたご縁があります。
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