ビッグイシュー・オンライン編集部より:本誌連動企画として、「中央ろうきん若者応援ファンド2016」の特集記事をお届けします。[この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています]
 

若者応援ファンド2017公募
受付期間 2016年10月3日(月)〜28日(金)

☞詳しくは特設サイトをご覧ください
 

2015年4月からスタートした助成事業「中央ろうきん若者応援ファンド」。どのような活動が始まったのか、これからどう展開していくのか。助成2年目の今、昨年に引き続き助成が決まった3団体が集まり、若者支援の現場が直面している課題や必要な資源などについて語り合った。

写真①3人
左から中野さん(一般社団法人栃木県若年者支援機構「しごとや」)、高橋さん(NPO法人文化学習協同ネットワーク)、上山さん(NPO法人キドックス)

非正規雇用の増加や、長引く不況で若者を育てる余裕がない企業も多く、ボロボロになって、ここに来る若者もいる。

中野:20年前から不登校やひきこもり経験のある子ども・若者の居場所やフリースクールを運営してきました。その中で、働きたい思いはあっても「即戦力」であることを求められる一般就労が難しい若者の問題に直面しました。6年前から、そんな若者3人とジョブトレーナーがチームで洗車や除草などの仕事場を引き受け、徐々に一人で仕事ができるように育てるという「中間的就労」の仕組みをつくっています。現在は協力企業が増え、常勤雇用へとつながる若者も出てきました。

昨年は助成金を活用し、ジョブトレーナー育成の研修プログラムづくりと、遠方から通う若者の交通費や昼食代の支給を始めました。助成2年目の今年は、女性も安心して働ける仕事を開拓するなど職種を多様化していきたいと考えています。

写真②中野さん
中野 謙作さん(一般社団法人栃木県若年者支援機構「しごとや」代表理事)

写真③農業
農園でジョブトレーニング

髙橋:私たちの団体は40年ほど前に東京・三鷹で学習支援の塾を立ち上げ、時代の変化に応じて、生きづらさを抱える子ども・若者の居場所づくり、ベーカリーや農場などの働く場づくり、若者サポートステーション(サポステ)運営や生活困窮者支援事業を展開してきました。DTP(パソコン上で行う出版までの編集作業)講座のバックアップをしてくれる企業が現れ、昨年は助成金で、デザインの知識を学びながら、実際の仕事の現場で就労体験を重ねることができる「DTPユースラボ」を立ち上げました。

非正規雇用の増加や長引く不況の中で若者を育てる余裕がない企業も多く、ボロボロになって、ここに来る若者もいます。就職するかしないかだけが目的でいいのかと、問いたいですね。今年は「ユースラボ」の卒業生が外部からの仕事を請け負い、2期生に知識を伝えていく「自分たちの職場づくり」への挑戦をしています。

写真④高橋さん
髙橋 薫さん(NPO法人文化学習協同ネットワーク三鷹事業部統括責任者)

写真⑤DTP
DTPユースラボ、座学の様子
 上山:「キドックス」は茨城・土浦を拠点に法人化して4年目です。2年前から、不登校やひきこもりの若者が捨てられた犬のケアや訓練を通して社会に踏み出すというプログラムを提供しています。ドッグトレーナーと相談の上、その若者の課題とも合う犬を担当することで、若者も成長していく。

「若者応援ファンド」で1人雇用できたことで、私が現場を離れて外部とのネットワークづくりや新規事業を考える余裕が生まれました。せっかく就労したのに前より精神状態が悪化して戻ってくる若者がいるため、今年は犬の迷子札などのグッズをつくる工房をつくり、中間的就労の場づくりを始めました。

写真⑥上山さん
上山 琴美さん(NPO法人キドックス代表理事)

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ドッグトレーナーと訓練中の犬たち

受け入れ環境も課題。就労後の支援ができたことで就職する若者が増えた

髙橋:私たちも参加して、東京都の中小企業家同友会の障害者部会に、若者の受け入れを考える研究会ができました。たとえば、緊張しすぎて研修先でごみ箱やトイレを使っていいかも聞けない若者がいます。能力が高くても内面に課題があって上手くいかないことがあるんですね。一方で、受け入れる企業の社長には育てなきゃというプレッシャーや不安もある。だから、「うちがダメでも、あの会社なら」といえる“社長ネットワーク”や、社長が支援者に気軽に相談でき、ともに学ぶ仕組みをつくろうとしています。

中野:企業の受け入れ環境についてはもっと語られるべきです。最近の事例で、月20万円もらえるという遠方の仕事を斡旋された男性が3カ月で派遣切りに遭いました。「寮費やいろんな経費を給料から引かれていたのでお金がほとんど支払われなかった。手元に1万円しかない」と遠方の町から電話してきました。また、うちで長い時間かけてひきこもり生活と自傷行為を乗り越え、やっと正社員になれた女性は上司の執拗ないじめに遭っている。でも、「辞めたら2度と就職できない」と泣きながら働いている。まだまだ社会では、若者の自己責任論が幅を利かせています。一方で、地元の協力企業に「中間的就労」を経て常勤雇用された若者たちは、真面目によく働くと評価されています。企業と若者、両方の声を聞いてコーディネートできる人材が必要だと感じます。

髙橋:これまで僕たちが支援する中で、就職できても、結局は受け身で弱い立場の若者をつくり出している気もしていました。搾取やパワハラなどの被害に遭った時に、それを乗り越えていくため、若者自身が学び、仲間をつくって「一人にならない」仕掛けがあればいい。昨年からサポステでも、就労後を支援するステップアップ事業が始まりました。そのことが安心につながるのか、就職する若者が増えました。

一度の失敗にめげない、なんとかなるという新しいモデル。若者と地域の関係を再構築したい

上山:うちのプログラムでリーダーシップを発揮できるまでになったのに、面接を受けて就職しても、うまくいかずに戻ってくるケースがあり、「中間的就労」が必要だと実感しました。犬のグッズを制作・販売する事業を若者たちと立ち上げたり、私も「しごとや」さんの研修などから学んでいるところです。今後は自分からここへ来られない人々への働きかけも行っていきたいですね。

髙橋:最近、近所の人がボランティアでカレーをつくり、卒業生と交流する日を設けています。協力企業の社長さんたちに業界の情報を助言してもらうこともあります。これらのネットワークを、若者にとっては「1度就職してダメでも、この辺をうろうろしていれば何とかなる」と感じられる新しいモデルにしていきたい。若者と地域・企業との関係の再構築とでもいえるような。その営みにより多くの人が参加してほしいと願っています。

上山:私は、動物をまもるのが当たり前の社会をつくりたい。その中で、若者たちが「支援/被支援」という関係ではなく“貢献できる存在”として一助を担うモデルを土浦でつくり、全国に広めていきたいんです。今一番必要なのは経営問題から若者のことまで相談できる仲間。事業の基盤づくりが今後の課題です。

中野:すべての若者が半年間はジョブトレーニングでさまざまな仕事を試してから就職できるような流れができるといいですね。つい最近、家族もお金も家もなく、非常に難しいケースの若者を3週間つきっきりで支援したことで、制度もお金も必要だけど、最終的には人は人でしか救えないと改めて実感しました。「人が人を支える」、この原点にみんなが立ち返る必要があるんじゃないでしょうか。

写真⑧

【活動へのご参加・ご寄付などは次の連絡先まで】

★一般社団法人 栃木県若年者支援機構(愛称:しごとや)
1999年から若者の就労支援を開始。子どもや若者のSOSに呼応し活動している。(オンライン掲載記事 http://bigissue-online.jp/archives/1043178131.html
お問い合わせ先 TEL 028・678・4745
http://www.tochigi-yso.org

★NPO法人 キドックス
2011年設立、12年に法人化。犬を介した若者の自立支援や子どもたちへの教育活動を行う。(オンライン掲載記事 http://bigissue-online.jp/archives/1051607509.html

お問い合わせ先 TEL 070・5088・6436
(火曜~金曜10時~16時)http://kidogs.org

★NPO法人 文化学習協同ネットワーク
1974年より、子ども・若者の学習支援や居場所づくり、社会参加や就労支援を行う。(オンライン掲載記事 http://bigissue-online.jp/archives/1055521560.html
お問い合わせ先 TEL 0422・47・8706
http://www.npobunka.net

■「中央ろうきん若者応援ファンド」は、家庭環境や経済状況、病気や障害などの社会的不利・困難を抱え、不安定な就労や無業の状態にある若者の自立支援に取り組む団体を応援する助成制度(2014年10月創設)。
http://chuo.rokin.com/about/csr/assistance/youth_support

■ 中央ろうきん社会貢献基金について
http://chuo.rokin.com/about/csr/assistance

■「中央ろうきん」って?
http://chuo.rokin.com/about/roukin





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