ほしいのは、ハウスじゃなくて、ホームなんだ 一夜のホームレス体験会、販売者さんたちの感想まとめ

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2016年のホームレス体験会に参加した、ビッグイシュー販売者たちの感想をお届けします。

自信満々だった(!?)スタッフたちとは対照的に、販売者さんサイドは当初この企画に半信半疑だった様子。でも本番では、みなさん手ごたえを感じられていて、大仕事を終えた後の、どこかさっぱりした表情で話してくれた人が多かったです。参加した販売者、スタッフの感想はこちらから!
ホームレスという「状態」を知ってもらうきっかけをつくる:「一夜のホームレス体験会」 : BIG ISSUE ONLINE

私自身、夜空と自分との間を一切隔てるものがなく一晩を過ごす、というのは初めての体験でした。気持ちの昂ぶりと同時に、なぜか普段以上の安心感にも包まれていたのは、販売者さんたちが隅々まで心を配り、夜通しパトロールもして見守ってくれていたからでした。 そして、何人かの販売者さんが言及されている“冬開催”、私も興味津々です。実施のハードルは高そうですが、販売者さんたちのサバイバル技術もまた、最大限に発揮されるでしょうから……。次こそは参加したいと思われている読者のみなさま、今から心の準備をどうぞ!(笑)

段ボールを10秒以内にばらして広げる、あれは身体が覚えた技術だよね 吉富さん

――このイベントのことを初めに聞いた時、正直どう思われましたか? これは成り立つのか?って思ったよね。参加する人が果たしているのか、特に女性は来られるのか? 雨も心配だった。8月末は台風シーズンだから。ふたを開けてみたら、若い参加者の人が多かった。結局、比較的自由な時間をとれる人たちなんだよね。社会貢献やボランティアに興味がある人、過去に野宿した経験があって、その時のトラウマを克服したい人、それぞれがいろんな思いをもって参加していた。

段ボールでケガする人がいないかも心配だった。今回は大丈夫だったけど、たとえばガラスの水槽や、ネピアの上質なティッシュを梱包してるものなんかは、ベニヤ板みたいに硬くて、手を切ってしまう危険がある。

――寝床づくりワークショップの講師役でした。盛り上がりましたね。

段ボール回収の仕事をしていると、10秒以内にばらしてぱっと広げて、リヤカーに積み込まないといけないから。うわーって歓声をもらったけど、あれは身体が覚えた技術だよね。

――夕食後の、語らいの時間はいかがでしたか?
(編集部注:あなたの人生の分岐点は?というテーマで、4つのグループに分かれて語り合った)

みんな思ったより苦労してるんだなぁと(笑)。バックパックを背負って世界中を旅した人もいたりして、内容が濃かった。自分には経験が足りないって悩んでる人もいたけど、これまでずっと環境に守られてこれたというのも、一つのすごいことだから。どんな人にも、語られるべき話はあるんだよね。 プレイベント(編集部注:本番の2週間前に、スタッフと販売者で予行演習を行った)の時は、ビッグイシューとの出合いの話はしなかった。人生の分岐点っていったら、僕らはビッグイシューの販売者になった話になるけど、それは本番に取っておこうって思ってた。あの雰囲気の時じゃないと語れないことってある。

食事は、よりリアルな炊き出しに近づけるとしたら、次はぶっかけ飯だね。釜ヶ崎の炊き出しメニューは、おかゆの椀におにぎりが添えてあるのとか、カレーと韓国のウェハースのセットとか。

でも、企画は今回のがシンプルでベストだったと思う。改良してもいいものにはならないよ。同じプログラムを組んでも、日時や場所、参加する顔ぶれが違えば、おのずと変わってくるものだから。

一般の人も、いろんなことがあるんだなぁ 岩村さん(販売場所:阪急豊中駅前)

――参加者の方たちと一緒の段ボール集めはどうでしたか?

僕はもう、慣れてしまってるから。僕たちは、スーパーでバナナを買う組でした。(編集部注:参加者は4つのグループに分かれ、各グループはスーパーや薬局でささやかな買い物をして、そのついでに段ボールをもらってきた。)いつもは、段ボールがお店の外にある時は静かにもらっていって、中にある時は、まだ使う人がいるかもしれないので、警備員さんかレジの人に声をかける。今回は、もらう時に何も言われなかったけど、レジの女性がじっと見てました。

――大人数だったから、目立ちますよね。

うん、じーっと何かを目で訴えてました(笑)。

――寝床づくりワークショップの、箱型タイプの講師役でしたね。大好評でした。

担当に決まったのは、当日の朝。あれは6枚で完全な形になる。体験会では、頭側に2枚と足側に2枚、地面に1枚敷いて終わりだったけど、もう1枚使ってお腹の部分を覆ったら、真冬でも大丈夫。段ボールハウスの作り方は、北から南まで全国共通です。僕も初めは人に教えてもらって、次から自分で作った。

――語り合いの時間はどうでしたか?

うーーん、一般の人も、いろんなことがあるんだなぁって。僕たちの組は…すごーく…重かった(笑)。みんな、初めは普通に明るく話し始めるんだけど、だんだん途中から…重たくなる。

――重い話もできるような、場の雰囲気ができていたということでは?

そうだと思う。後で他の組の人たちに聞いたら、今とか、これからの話をした人も結構いたみたい。僕たちの組は“過去を振り返る組”だったと思う。

――気になったところは?

もっと広い場所がよかったかな。食事の時とか人がいっぱいで、テレビのカメラマンの人とぶつかってしまった。カメラが柱に当たってしまって、向こうは「すみません」って謝ってくれたけど、なんか目が怒ってた。僕のせいじゃないですって言いたかった(笑)

夜通しパトロール 普段の環境との違いを感じた 進藤さん

――今回のイベントの企画を聞いた時、どんなことを思われましたか?

お客さん来られるかな?って心配でした。いったい何人集まるのかなって。

プログラムを聞いたら寝る時間も早いし、段ボールハウスを作って、ご飯食べて、泊まるだけ?それで楽しんでもらえるのかなって。

――実際にやってみて、いかがでしたか?

興味本位の参加者はいなくて、みなさんホームレスという状態を、自分自身に重ねて考えてくれていましたね。

ビッグイシューを一度も買ったことがない人や、ビッグイシューが売られていない三重県から来てくださった人もいました。そういう人たちから、熱心な質問を受けました。だから、参加者の方たちに自分のことを話してもらう前に、ビッグイシューについて伝えたり考えたりする時間があってもよかったのかな、と思いました。ビッグイシューという雑誌の意義や、そこで働く私たち販売者のことを。

――夜通し見張りをしてくださってましたね?

どうせ一睡もできないだろうと思ってましたから。プレの時にネコやネズミを見たので、もし参加者の人たちが噛まれたらと心配でした。実際、当日も敷地のフェンス際までは来てました。

――パトロールをしながら、どんなことを考えていましたか?

普通の人でも意外と寝られるんだな、と。女性の方々も、屋外で段ボールを敷いただけで。自分としては、普段の環境との違いを感じました。住宅街の中にあったから、生活音が聞こえてくる。自分の状況が普通の生活から隔たっているということを感じてしまって、取り残された気がして逆につらかったです。今、目の前で寝ている人たちは、一夜が明けたら家に帰ってゆくけど、自分はずっと路上にいるんだなって。いつもはそんなこと全然忘れてるんですけどね(笑)。

でも、全体を振り返れば、楽しかったです。ホームレスのことを、こんなふうに思ってくれてる人たちがいるんだと知りました。参加者のみなさんにも、満足していただけたと思いたいです。

実は、段ボールハウスで寝たことないんだよね 和田さん(神戸市営地下鉄名谷駅前)

――今回のイベントはどうでしたか?

ちょっと疲れたかな。(笑) 実は夜は泊まらずに帰ったけど、アパートは遠いんで結局遅くなったし(編集部注:和田さんは現在、路上生活を脱出し、アパートで生活しながら雑誌を販売している)

――なんで泊まらなかったんですか?

体調のこともあるし、実は段ボールハウスで寝たことないんだよね。昔、中之島公園にあったテント村では、数ヵ月生活したことはあるんだけど。正直、僕が言うのもなんだけど、段ボールで夜寝るのは大変だよね。

――そもそも参加された動機は?

直前まで販売者の参加があまりなさそうで、販売者と過ごすイベントなのに、販売者がいなかったらお客さん困るやん!と思って。結局ぎりぎりで販売者が増えたけど、急にやめるのも迷惑なので参加しました。

――印象に残っていることはありますか?

やっぱり一般の参加者の人と、ゆっくり話せたのはよかったよね。販売は孤独な仕事で、もちろん雑誌を買ってくれた人と話すことはあるけど、ああやってじっくり話す機会はあまりないから。あとは他の販売者の見せ場が多かったのもよかったよね。人生シェアリングでは「しゃべりすぎや!」って思うぐらい、販売者のみんなは自分のことについて話していたね。

――次回また同じようなイベントがあれば参加しますか?

うーん、販売者が少なかったら(笑)

路上から部屋に移っても、ずっと変わらず仲間だから 東さん

みんな一生懸命やっていたね。段ボールハウスづくりも、ほかのいろんなことも。夜、寝付けなかった人もいたようだけど。僕はライターの稗田さんの隣で、横になって30分~1時間くらいで寝れたと思う。ただ、地面に段ボールを敷いただけだったから(編集部注:スペースが足りず、一部の販売者さんたちは風よけの囲いなしで寝ていた)、寒くて何度かトイレに起きたけど。

ただ、ホームレス体験というよりキャンプみたいだったね。みんなで集まって、夜に話をしてね。参加者の人たちも、違いをわかっていたとは思うけれど。

実際に路上で野宿するなら、物を盗られないように気を付けなきゃいけない。女性は危ないことが多いし。それから、段ボールハウスの暖かさは、冬にわかるよ。真冬でもきっちりふたをすれば、汗が出るくらい暖かくて、ぐっすり寝られる。中と外の温度差がはっきりわかる。一度試してみるといいね。

また参加したい。参加することで、自分もいろんな人の話が聞ける。自分は近いうちに部屋に入る予定だけど、ずっと変わらずに仲間だから。ビッグイシューの販売も続けたいし、路上生活じゃなくなっても、次も参加するつもりだよ。

次回のメニューはどんぶり飯やろね Yさん(JR森ノ宮駅前)

――けんちんうどん、すごくおいしかったです。

ぜいたくはできないってわかってたんで、野菜を入れて具だくさんにしました。「みんな農園」のキッチンが使いやすくて、それに二人のボランティアさんが大変頑張ってくれたので、作業はしやすかったです。おにぎりは、参加者のみなさんが握ってくれましたし。次回があるなら、メニューはどんぶり飯やろね。ただ、あの設備ではご飯がいっぺんにたくさんは炊けないのが悩みどこやけど。

――ずっと裏方で調理されてましたが、参加者の方たちとはお話しできましたか?

夕食後の話し合いには加わらせてもらいました。それから夜ふけのキッチンで、(スタッフの)吉田くんの後輩の男の子にいろいろ聞かれました(笑)。もう一人の男の子も一生懸命で。社会貢献の方法を知りたい、ビッグイシュー販売の手助けを自分の通ってる大学でできないかって。販売者に言うより、事務所に相談してくださいって言うときました(笑)。

――とても熱心ですね。

何かのきっかけづくりに来ている人が多かったんちゃうかな。ビッグイシューのこれからを考えると、今回みたいな体験型のイベントを増やしていくのは一つの手やとは思う。1回きりでは意味がないよね。

――次やるとすれば、どんな形がいいでしょうか?

集合時間を早めて、野宿の前に、路上でビッグイシュー販売を体験してみるとか? 夜回りをするのもいいと思う。冬の寒さ・しんどさを体験するのも大事やと思うけど、さすがに真冬は心配なので、秋の終わりか早春あたりがええかもしれんね。

参加者の人たちともう少しゆっくり話したかった Nさん

当日は安心して眠れました。いつもは一人で寝ているので、自転車の通り過ぎる音なんかが気になってしまう。

スタッフや他の販売者がプレイベントで確認していたおかげで、当日の流れはスムーズだったと思うよ。あえて言うなら、グループで話をする時間がもっとほしかったかな。もう少しゆっくり話したかった。初めに割り振ったグループを最後まで維持して、ご飯やいろんな作業も一緒にしていれば、もっと親睦を深められたんじゃないかと思う。

食事は、ホームレスにしては豪華すぎるという意見もあったけど、僕はあれでよかったと思うよ。7千円も取るし、遠方から高い交通費を払って来られてる人もいるわけだから。もし、本当のホームレス体験に近づけるなら、参加費を下げるべきだと思う。それから場所ももっと広いところがいいね。

もし次回、冬に実施するなら、寝袋は絶対に必要。普通の人の家にはないだろうから、主催者側で用意したほうがいいね。足が冷たいんだ。どんなに靴下を重ねばきしても、そこだけは全然温まらないんだよ。

女性の方が、意外と寝れるもんだね 志村さん(JR吹田駅前)

――このイベントの企画を聞いた時の印象は?

無理だなって思ったよ。お客さん、来ないだろうなって(笑)。でも思ったよりは集まって、若い人が多くてびっくりしたね。

――段ボールハウス作りは、いかがでしたか?

あんまり集められないんじゃないかと心配だったから、事前にある程度用意してたんだ。でも、薬局でたくさんもらえたよね。

――本当のホームレス生活との違いは? いつものご飯は、あんなにおいしくないよ(笑)。次はもっと本格的にやらなきゃ。夜、コンビニのごみ箱で、賞味期限切れの弁当を探すんだ。段ボールも、あんなに堂々ともらっちゃだめ(笑)。こっそりもらわないと…。

――プレイベントの後に風邪をひかれたとか?

そう! だからもう行かないって言ったのに、吉田くんに無理やり……(笑)。彼は段ボールハウスのことしか頭にないから。俺の身体と段ボールハウスと、どっちが大事なのって(笑)。
(編集部注:スタッフの吉田は「志村さんには本当にお世話になりました。困ったときにはいつも助けてくださる」と感謝していました。)

あれは、女性の方が意外と寝れるもんだね。プレの時も、女性のボランティアさん二人がぐっすり寝てたよ。

――本番では“女子部屋”が設けられるなど、細やかな心遣いがうれしかったです。

あれは前の日に決まったの。女性の参加者が多いって聞いたんで、建物の側で寝てもらおう、仕切りも必要だなって。はじっこの方は猫が来るし、虫も多いからね。男はどうでもいいんだ。放っといたら適当に寝るだろうから(笑)。

――志村さんは北海道出身ですよね。札幌では、冬はどう過ごされてましたか?

厳しいよー。まず、寝れないね。屋根のある狸小路通りなんかを夜通し歩いて、朝、札幌駅が開いたら、中に入ってちょっとだけ眠るんだ。

――全体を振り返って、いかがでしたか?

お客さんたち、また来たいって言ってくれたね。始まる前は不安だったけど、まぁ、成功といえるんじゃないかな。よかったよ。

次は冬にって話もあるみたいだけど、真冬はきついよー。全員に寝袋が要るし、段ボールハウスもきっちり作んなきゃならないから、枚数が半端ないと思う。せめて春先がいいんじゃないかなぁ。

ビッグイシューを知らない人に、どうアピールするかが大事 寺岡さん(大阪駅前桜橋口)

――なぜ参加しようと思われたんですか?

初めに聞いた時は、稼ぎ時の土日、特に夕方に販売場所を空けるなんて無理、付き合ってられないと正直思った。だけどこの夏、売り上げがずいぶん落ちて、ネットカフェにも泊まれなくなってた。この状況を打開したかったのと、参加した販売者にはいくらか分配があると聞いたので、仕入れ金の補充ができるかなと。お金に釣られて……というのが正直なところです(笑)。

――実際に参加してみて、いかがでしたか?

よかったですよ。ただ、お客さんに7千円も出させて、あの食事はどうかな? 夜は煮込みうどんに朝はパンとバナナ。一人100円もかかってないんじゃない?

参加者の人たちと話をして思ったのは、雑誌の内容を本当によく知ってくれているということ。読み込んで、自分の日常にどう活かすかというところまで考えてくださっている。

「今月の人」の記事で、「妹と再会した」とかいう話を読んでも、僕は単なる美談だと思ってたんだ。(編集部注:ドイツ北部のストリート誌販売者が、東西ドイツ時代、国境に隔てられ音信不通になった家族と、ストリート誌の記事をきっかけに再会を果たしたという話。ビッグイシュー291号掲載)。だけど、参加者の女性が、「家族と別れてしまった若者が、30年もの間、どんな人生を過ごしたんだろうと思うと涙が出てきました」って。

それを聞いて、僕も涙が出そうだった。ビッグイシューのスタッフで、そこまで考えている人がどれほどいるだろうか。自分には欠けているところがあった、甘えがあったってつくづく感じたよ。プロとしての意識をもって、もう一度真剣に販売に取り組みたい。

暑い時も寒い時も外に立って働いている販売者の収入が、生活保護の人を下回るのは正直悔しい。自分の後、誰が立っても一定の収入が得られるような場所にしたい。そのためにも、ビッグイシューを知らない人にどうアピールするかが大事。今回、テレビ取材が入ったということにも期待してるんだ。効果があるといいけど。

今回のイベント、やる価値は十分にあったと思う。次は、がんばって経費を抑えて参加費を下げて、ビッグイシューのことは知らなくても野宿に興味があるような人たちが気軽に参加できるような、それをきっかけにビッグイシューの魅力を知ってもらえるようなイベントになるといいね。

いっぺんに大勢の家族や親戚ができたみたいだった 山崎さん(地下鉄心斎橋駅前)

いやー、テレビの力ってすごいね!(編集部注:8月29日に、毎日放送の午後の情報番組『ちちんぷいぷい』で、ホームレス体験会の様子が放映された。)昨日からいろんな人が声をかけてくれるよ。さっきも女の人が「テレビ見たよー。山ちゃんいっぱい映ってたね!」って。

いつもは、この場所(心斎橋筋商店街の入り口)に立ってても、ビッグイシューを知らない人が9割。東京じゃ知ってる人が9割だけど。ビッグイシューはもっと宣伝をやったほうがいいね。

なぜ参加したかって? そりゃ、黄さんよ。ボランティアのね。黄さんは俺のお客さんだからよ、彼女に言われたら断れねぇ。俺は、事務所の方にはほとんど顔を出さないから、黄さんがいなかったら行ってないよ。(編集部注:山崎さんは、ふだんは堂島のビッグイシュー事務所ではなく、雑誌の卸しを委託しているNPO釜ヶ崎支援機構で仕入れをされている。)

参加した人は、いくらかもらえるとも聞いた。正直、雑誌の売り上げだけじゃきついから。でも、ゼニカネの問題じゃねぇんだ。ビッグイシューは心の支えなんだよ。

俺はいつも一人だろ。人と深くかかわることがないんだ。釜ヶ崎にいたって、一緒に飯を食いにいくような奴はいねぇ。それがいっぺんにあんなに大勢、家族や親戚ができたみたいだったよ。

だけど、「これから蚊取り線香を買いに行きます」なんて、そんなものを買う余裕のあるホームレスがどこにいる? 食事も豪華すぎるし、あんなふうに囲いがあって、安心できる場所なんてありえねぇよ。あれは“予行演習”だね(笑)。

だから次は、路上とは言わないまでも、許可を取って公園とか、実際にホームレスがいる所でやるべきじゃねぇか。新宿の中央公園で、年越しの時にやってるだろ? あんな感じだよ。

とにかく楽しかったよ。定期的にやったらいいと思う。毎月でもやりたいって、吉田さんに言っといてよ(笑)。

ほしいのは、ハウスじゃなくて、ホームなんだ。 坂田さん(地下鉄肥後橋駅前)

――一般の参加者を迎えてみて、いかがでしたか?

段ボールハウスなんて、僕らには何でもないことなんだ。でも参加者の人たちは、新鮮に驚いてた。そのことに、僕は逆に驚いたかな。ホームレスなんか、夜、心斎橋あたりに行けば、いくらでもいるのに…。意外と、見ているようで、見えていないのかな、というか。

――坂田さんのグループは、どんな方たちでしたか?

女性2人に、男性2人。わざわざ東京から来ていた人もいたよ。みんな、ものすごく熱心だった。フランクな感じじゃなくて、ホームレス問題に対しての真剣さ、切実さがあったね。何とかしなきゃ、どうにかしなきゃって。今回の体験に、一種の感動も覚えてくれたみたい。僕らにとっては、そう驚くことじゃないんだけどね。

だから、これは夕食後のシェアの時間にも言ったことなんだけど、段ボールハウスは、あくまでもハウスにすぎないんですよって。僕らは世間を捨てて、家族を捨てて、独りぼっちになってしまってる。ほしいのは、ハウスじゃなくて、ホームなんだ。

――次回に向けて、もっとこうすればいい、というところは?

そうだね…。真面目な議論だけじゃなくて、歌やダンスとか、みんなが一緒になって楽しめるものを入れたらどうだろう。あたたかい、“ホーム”を感じられる時間があるといいなと思う。 おもしろかったよ。みなさん、あまりにも真剣で、こちらが戸惑ってしまうくらい(笑)。次も、単なるホームレス体験にとどまらず、世間から隔てられている、僕らの普段の生活の方にまで、心を配ってもらえるような企画になるといいね。

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