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プルトニウムが放出されれば、関西圏にも影響が及ぶ可能性

11月5日に福井市で「もんじゅ廃炉勝利集会」が開催された。95年に高速増殖原型炉「もんじゅ」でナトリウム漏えい火災事故が起き、その翌年から毎年廃炉を求める全国集会が開催されてきたが、廃炉が正式決定されたことで今年は最後の集会となった。予想を超えて約400人が集い、準備した資料が足りなくなるほどだった。集会では30年を超えるもんじゅ建設反対運動を写真で振り返った。すでに鬼籍に入られた方々を思い起こし、参加者は若い頃の写真に照れながらも笑顔がこぼれた。この集会で、筆者は「もんじゅの廃止状況をキチンと監視することが必要だ」と訴えた。





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もんじゅ廃炉勝利集会


もんじゅの廃炉決定の次には、運営主体である日本原子力研究開発機構(以下、機構)が具体的な廃炉に向けた手順や期間、費用などを記した廃止措置申請を行うことになる。今年4月にも申請されると言われていたが未だに行われず、審査にも具体的な廃止作業にも入れない。原子力規制委員会の「もんじゅ廃止措置安全監視チーム」は7月に行った会合の席上、申請を急ぐように求めたが、機構は「準備ができているものの地元自治体の了解が得られていないことから提出できない」と説明していた。

もんじゅの中には核燃料が残ったままである。重大事故が起きて燃料のプルトニウムが放出されることになれば、関西圏にまで影響が及ぶかもしれない。また、冷却材に使われている金属ナトリウムが漏洩すると、大規模な火災が起きる。1995年の事故はまさにナトリウムが漏れ出て火災となり、あわや大惨事になりかけた。事故は12月だったが、もし湿気の多い梅雨時に起きていたら大規模な水素爆発が発生していたかもしれないと言われている。核燃料を炉心から抜き出し、原子炉や原子炉につながる配管からナトリウムを抜き取ることは急務だ。


福井県と敦賀市が政府に要請書
地域振興策と廃炉を取引?


自治体が合意していない理由は、福井県が地域振興策を政府に求めているが、よい返事が得られていないからだ。8月9日に福井県およびもんじゅの地元である敦賀市とそれらの議会議長など7団体で「もんじゅの廃止措置に関する要請書」を政府に提出した。その中には、「福井をエネルギーの総合研究開発拠点地域とすること」「交付金の増額」「北陸新幹線の早期整備」「舞鶴若狭自動車道の4車線化」など地域振興の充実がある。

要求の中身が廃止措置とはまったく関係ないので驚いた。福井県はこれまでも、もんじゅ運転再開を取引条件にさまざまな地域振興を要求してきた。たとえば、北陸新幹線の大阪まで延長に際して小浜経由をバーター取引として実現させてきた。しかし、敦賀駅前通りはシャッター街となり、結局は原発による振興策が地域を豊かにしなかったことは明らかだ。なぜ、廃炉が決まっても同じ要求を続けるのか。政府の振興策に依存していては地域の未来はない。地場産業や観光を中心とした地域自立策を真剣に考える時がきているのではないだろうか。

福井県ともんじゅの地元自治体である敦賀市に、廃止措置申請に早期に合意することを求めて、筆者が代表を務める「新もんじゅ市民検討委員会」を中心に、11月6日に申し入れを行った。非公開だった前述の要請書の公開や自治体の姿勢の透明性も問題にした。

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福井県知事への申し入れ

福井県と敦賀市は、要請書は早急に公開すると約束したが、廃止措置申請に合意しない理由については、廃炉を実施する機構の組織体制が明確でなく信頼できる状態ではないからだという。そして、「地域振興と取引しているとは心外だ」と開き直った。

機構の廃炉を進める組織体制に不安があることには筆者も共感する。しかし、それは廃止措置申請後の審査と並行して議論を進めていけばよい問題で、申請に合意しない正当な理由にはならない。本音は地域振興策への支援や予算措置を求めた要請に対する政府の回答待ちと言われても仕方がない。こんな状態で事故が起きたら福井県の責任も免れない。

(伴 英幸)

(2017年12月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 324号より)


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
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