親からの虐待、精神疾患などが原因で生活習慣が身につけられなかったことが人間関係の悪化を招いている。

[この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています]

雑誌ビッグイシュー247号では「BONDプロジェクト」の活動や成り立ちをご紹介しています。
「妊娠しても頼る人がいなくて、援助交際を続ける子もいます」：BONDプロジェクト・橘ジュンさんに訊く10代・20代の女性支援

東京・渋谷や新宿の路上で、生きづらさを抱える10代・20代の女性たちの声を聞き続けてきたＢＯＮＤプロジェクト。新しく始まったキャンプ合宿と今後の展望について統括担当のＫＥＮさんとスタッフの水野ちひろさんに聞いた。

渋谷からほど近い事務所と荒川区日暮里駅前の相談室には、北海道から沖縄まで、時には海外からも電話やメールの相談、面談依頼が来る。スタッフの水野ちひろさんは「必要に応じて児童相談所や警察、婦人保護施設や病院、各地域の支援団体につなぎ、行き場のない女性は団体運営のシェルターで保護する」と言う。相談者の多くが自殺願望を抱えているが、その背景には「親からの虐待、親や自分自身の精神疾患や障害、性被害体験」などがある。

支援のなかで水野さんらは「あいさつの習慣が身についていなかったり、家庭料理を食べた経験がなく、魚の食べ方がわからない女性」などがいることに気づいた。「それは育った環境によるものですが、事情を知らない人がそれを不快に思い、人間関係の悪化を招くこともあります。」

そこでBONDプロジェクトでは中央ろうきんの助成を活用し、15年５月から月に１度、「生活習慣を身につけ、他者との関係を学ぶキャンプ合宿」を開催。２泊３日の合宿には毎回３～５人が参加している。

初めての経験。家庭では得られなかった「同じものを食べて、おいしいと共感し合う大切さ」を知る。

統括担当のKENさんは、「たとえば、過呼吸の女性同士が一緒になると、悪い意味で共鳴してしまうことがあります。そのため、これまでは支援者との一対一の関係を大事にしてきました」という。

しかし、今回の合宿では「わからないことを教え合う相乗効果が期待できそうな組み合わせ」を考えてメンバーを構成。「水汲みやまき割り、うどんを粉から打つなど、共同作業を通して協調性を学んだり、あいさつや身だしなみ、起床・就寝など生活のリズムを身につけることを目指しました」

参加者からも「野菜を切るのは初めてだったが優しく教えてもらえた」（18歳）、「同じものを食べて、おいしいと共感し合う大切さを感じた」（28歳）などの感想が寄せられている。

自信と生き甲斐を引き出す就労体験の場をつくりたい。 動く相談窓口「移動カフェ」構想

一方で、課題もある。「これといったスキルもなく、やむを得ず風俗店で働いているシングルマザー」や「他人から必要とされている気になれる援助交際から抜け出せない少女」の就労支援だ。

現在、「ザンビアの伝統的な布で髪を結ぶシュシュをつくり、収入の足しにしてもらうプロジェクト」が進行中だが、これを「パソコンスキルや介護の資格の取得など、就労の選択肢を広げる講座」にまで広げ、今後の合宿に盛り込みたいとKENさんは意気込みを語る。

今年４月には、ワゴン車で移動する動く相談窓口「移動カフェ」もオープンする予定。「カフェなら、関東近郊の女性たちにこちらから会いに行けるし、自分の好きなタイミングで悩みを打ち明けやすくなるはず」と水野さんは期待する。

「それとは別に、生きづらさを抱える女性たちの秘密基地のような居場所もほしい。そこで、たとえばドーナツをつくって移動カフェで販売する。『おいしいから』と言って足を運んでくれる人が増えれば、自己肯定感が低い彼女たちの自信や生き甲斐にもつながると思うんです」

合宿を契機に、いくつものアイディアがふくらんだ。