正月気分も冷めやらぬ2026年1月5日、中部電力は、浜岡原子力発電所(静岡県)の地震動評価における代表波(平均に最も近い波)選定が、原子力規制委員会の審査会合で説明した内容と「異なる方法や意図的な方法で実施されていた疑い」があることが判明したと発表した。同日、経済産業大臣が報告を求めた。

2025年の内部告発で発覚
地震動を過小評価する目的か
1月7日の原子力規制委員会(規制委)の会合でも中部電力の不正事案の概要が報告された。報告によれば、2025年2月段階で内部告発があり、これに基づき5月から原子力規制庁が中部電力と複数回の面談を行っていたところ、12月18日の面談で、中部電力が会社内部の調査でも不正行為が確認された旨の説明があったという。
中部電力は審査会合で、「基準地震動策定にあたって(中略)計算条件の異なる『20組の地震動』を計算し、それらの『平均に最も近い波を代表波』として選定する方法を用いる旨を説明」していた。一方、実際には18年以前は「『20組の地震動とその代表波』のセットを一つではなく多数作成し、その中から『一つのセットの代表波』を選定」していた。複数のセットから自らに都合の良いものを選んでいた懸念がある。
また18年以降は「意図的に『平均に最も近い波ではないものを代表波』として選定したうえで、当該代表波が20組の平均に最も近くなるように、残りの19組を選定し、『20組の地震動とその代表波』のセットを作成」していた。地震動が過小評価となるよう選定した疑念がある。
基準地震動とは原子力施設の設計の際に想定する最大の揺れのことで、耐震設計の基本となるものだ。規制委の会合では厳しい対応を求める声が相次いだ。当然だ。原子力規制委員会の審査は書面上で行われる。提出された資料がすべてだ。それが信頼できないとなると、審査が成り立たない。中部電力は「疑い」と表現し、規制委は「不正行為」と表現するが、本件はそのいずれでもなく捏造・改ざんだ。原子力規制委員会は敦賀原発の事例にならって浜岡原発を審査不合格とすべきだ。
資料の改ざん見抜けない規制委
他社の調査、見送りでいいのか
一方で、規制委は安全性の確保は原子力事業者に一義的な責任があること、事業者と規制当局の関係は信頼すれどもチェックするものであり、また他社の検査の中で安全文化の劣化は見られないので、今回と同様の問題が他社で起きているかについて調べるつもりはないという。
だが規制委は、中部電力の安全文化の劣化についても、内部告発のある25年まで感知できなかった。今、他社の劣化を検知できていないのだから、劣化がないかどうか調べる必要があるのではないか。実際、過去を振り返れば、02年に発覚した東京電力の全原子力発電所でのトラブル隠し事案も内部告発によるものだった。その後、中部電力、東北電力、日本原電でも原発でのトラブルを隠していたこともわかった。
より致命的なこととして、規制委は申請資料が改ざんされたとしても見抜くことができない、という問題があることがはっきりわかった。規制委は現状の審査制度を見直し、事業者に二次資料ではなく、一次データの提出を義務化し、公開させるべきだ。また、計算プロセスのトレーサビリティの確保も必要だ。これまで提出された資料ではすべて事業者名義となっているが、実際には計算などを実行した担当者や委託事業者が存在するはずである。それらの名前を明記することで責任範囲を明確化するべきだ。
本件は中部電力一社にとどまらず、現在の規制自体の問題点を浮き彫りにした。規制体制の抜本的見直しが必要であり、さらに、他社への水平展開も当然必要である。(松久保肇)
まつくぼ・はじめ
1979年、兵庫県生まれ。原子力資料情報室事務局長。
金融機関勤務を経て、2012年から原子力資料情報室スタッフ。共著に『検証 福島第一原発事故』(七つ森書館)、『原発災害・避難年表』(すいれん舎)など https://cnic.jp/
上記は2026-02-01 発売のTHE BIG ISSUE JAPAN520号から「原発ウォッチ」第226回を転載した記事です。
アイキャッチ画像::Korekore/iStockphoto
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