デフレ社会なのに、家賃だけが下がらないという。若者たちは今、どのような住宅問題を抱えているのだろうか? 20~34歳の、都市圏で親から独立してひとり暮らしをする31人(東京21人/大阪10人)、また親と同居している20人(東京10人/大阪10人)にアンケートをして、ひとり暮らしの現状、住宅に対する悩みや意見、そして提案を聞いた。
若者住宅アンケート調査:劣悪な住宅に住む若者たちの、住宅へのつつましい要求
進学、就職、転勤、親との関係、夢の実現—独立した理由
まず、ひとり暮らしをする若者(31人)に、親から独立した理由を聞いてみた。東京のひとり暮らしをする人の4割は、その理由に「実家が北海道で、高校に通うため東京でひとり暮らしを始めた」(21歳/男性/会社員/東京)など、「進学」をあげている。
次いで、「就職したら親から独立するのは当たり前と思っていた」(33歳/女性/デパート勤務/東京)など、4人に1人は「就職」が契機となり、「転勤」がきっかけになった人もいる。
また「19歳の時に、父親と大げんかをして家を出た。一定の距離があった方が親との関係もうまくいくと思った。現在は上京してひとり暮らし」(31歳/女性/会社員/東京)といった「親との関係」を理由にあげる人、さらに「音楽バンド活動のため」(23歳/女性/フリーター/東京)、「夢の実現」(32歳/男性/フリーター/大阪)を目指す人もいる。
15㎡未満に住む人が3人に1人の東京、家賃は月収の4分の1
では、ひとり暮らしをする若者は実際、どんな住宅に住んでいるのだろうか?
5人に1人は30~40㎡未満の住宅に住んでいる。15㎡未満、15~20㎡未満、25~30㎡未満の住宅に住む人もそれぞれ5人に1人に迫っている。40㎡以上に住む人はたった1人と圧倒的に少ないことがわかった。
15㎡未満、15~20㎡未満、25~30㎡未満の住宅はワンルームまたは1K、30~40㎡未満の住宅は1K~1DK程度と考えられるから、ほとんどの若者がワンルーム、1K、よくて1DKの住宅に住んでいることになる。
また、大阪と東京の住宅スペースにはかなりの差があり、大阪では30~40㎡の住宅に住む人が約半数あるのに比べ、東京では約3人に1人が15㎡未満の住宅に住んでいる。15㎡未満といえば6畳の部屋にユニットバスなどが付いている部屋が想定でき、東京での住宅環境の厳しさが感じられる。
このような部屋に住む若者の3人に1人が当然ながら、住宅に対する不満をもっている。中でも多いのが、「壁が薄く隣室の音が響く」で、「狭い」「老朽化」「暑い」「風通しが悪い」「耐震性」など、住宅の構造自体にかかわる不満だ。
また4人に1人は、「キッチンが狭い」「収納スペースがない」「換気が悪い」「洗濯機置き場がない」など住宅設備に対する不満を述べている。
社会環境については4人に1人が不満を述べる。その内容は、「本屋」「スーパー」「駅」に遠いこと、「狭い道」「ごみ捨ての不便さ」などである。自然環境についてまったく言及がなかったことも注目されよう。
理想の住宅スペースとしては、3人に1人が30~40㎡未満の住宅を望んでいる。これは東京も大阪も変わらない。
現状の家賃が収入に占める割合を聞いてみると、3人に1人が4分の1以下ともっとも多く、3分の1以下がそれに続く。仮に月収20万円とすると、5万円〜6万円程度になる。しかし、5人に1人は理想の家賃として、収入の5分の1以下を望んでいる。月収20万円の人なら家賃4万円というところである。
人間関係がネック、ルームシェアはNG。結婚したら自分の空間を
友人や知人とのルームシェアについての意向も聞いてみた。広い住宅の確保や家賃を軽減できることから、ルームシェアは有効な1つの選択肢ともいえるが、回答は予想を裏切った。
約6割がルームシェアを「してみようとは思わない」と答え、その理由として、「他人との関係がわずらわしい」が多く、人間関係をあげる人が多い。
反対に、「してみたい」人は、3人に1人。その理由は「家賃負担が少なくなる」が圧倒的だった。また「広い住宅に住める」「他者との交流を楽しめる」という理由も多い。
<後編「アンケート調査で見る、日本の若者の住宅要求の弱さ(2/2)>
(2009年10月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第128号)