栃木県鹿沼市で若者や障害者の支援に取り組むCCV。地域ボランティアの協力で、当事者を理解し寄り添う支援が若者の就労でも実を結び始めている。その現場を訪ねた。

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フリースクールの授業風景

 

発達障害について独学で勉強。教え子たちのその後を見つめたところからはじまった。

 CCV代表の福田由美さんは小学校教員時代、教室でじっとしていられない児童が増えてきたことから、発達障害のことを独学で勉強し、鹿沼市初の通級指導教室(※1)をつくった。のちに、教え子たちのその後を追跡したくて、希望して中学校に着任すると、教室で個別指導を受けていた子は落ち着き、受けなかったグレーゾーンの子が「非行やうつ病などの二次障害」に陥っていることが多かった。「小学高学年で現れる不適応のサインに気づき対応できれば、ひきこもりや不登校を防げるはず」と考えた福田さんは2009年、教え子の保護者らとCCVを設立。
地域ボランティアに加え、福祉の専門家を招き、フリースクール、就労継続支援B型事業所、児童発達支援施設、グループホームなどをニーズに応じて立ち上げていきました。
 3年目には、障害のある人の就労を支援する「トランジションセンター」を設立。フリースクールでは障害の有無や年齢を限定しない就労支援を始めた。中には「学校では問題児だったが、ガテン系の仕事に就いたら精神的に安定し、『経営者になってCCVの子たちを雇うんだ』と言う頼もしい若者」もいる。
現在、約10人が農場やカフェなどで、ボランティアから時給500円の有償ボランティアを経て、非常勤から正規雇用へという流れができつつあります。現場で、ボランティアが時に厳しく、挨拶も含めた生活指導をしてくれるおかげです。
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代表の福田由美さん。開店まもないフェアトレードショップスペースにて。奥はフリースクールスペース

専門機関と家族だけでなく、地域が若者の問題を「我がこと」として考えられるように

 たとえば小学生の頃から不登校がちで、高校中退後、家で3人の兄弟の面倒をみていた21歳の女性は、人が怖くて電車にも乗れなかったが、CCV運営のカフェで客から「おいしいね」とお弁当の注文をもらうようになって自信がつき、「東京に一人で遊びに行きたい」と言うまでになった。
 また、発達障害でひきこもっていた23歳の男性は県外から鹿沼に移住し、児童発達支援の有償ボランティアをしながら、フリースクールで高卒資格を取ったが、アルバイト先では怒られてばかり。そこで、綿花づくりを通して地域の高齢者と若者が交流する「活きいきこっとん村」の活動に参加したところ、ゆったりしたペースが性に合い、母体の高齢者施設に正社員として雇用された。
 講習を受けた若者がフェアトレードショップ(※2)で接客する計画も進行中だ。

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フリースクール兼ショップ外観。近くにはおしゃれなカフェや公園もある)

 このショップやカフェを若者の相談窓口にしようと、CCVは4人の相談員が常駐。「多様性を理解し、発達障害などの知識も学んだ地域の人たちで、人件費は中央ろうきんの助成金を充てています」
 さらに、不適応のサインが最初に現れる小学校高学年の子どもたちに働きかけるために、教育と福祉をつなげたいと、鹿沼市と「ひきこもり対策協議会」を立ち上げる話し合いも進む。
支援が進む地域がある一方で、家族のひきこもりを周囲に明かしにくい地域もある。でも少子高齢化が進むなか、高齢者も若者も助けてほしいと思っている。若者の問題を専門機関と家族だけではなく、それぞれの地域が我がこととして考えられるように、他のNPOと連携しながらフォーラムなどの啓発活動を続けています。


※1 小・中学校において、通常の学級に在籍するLD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)、言語障害、難聴などの児童・生徒に対し、障害の状況に応じた教育を行う教室
※2「一般社団法人なないろのあしもと」と連携して設立。
フェアトレードショップ コブル  Facebookページはこちら
NPO法人 CCV(Creative Communication Village)
http://ccv-npo.com/

不登校・ひきこもり・発達障害などの子どもたちへのサポート、障害者の就労・生活支援、コミュニティーカフェやグループホームの運営などを通し、教育と福祉の枠を超え、障害のある人や青少年が安心して集える活動場所を創造している。

栃木県鹿沼市茂呂1997-2
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■「中央ろうきん若者応援ファンド」は、家庭環境や経済状況、病気や障害などの社会的不利・困難を抱え、不安定な就労や無業の状態にある若者の自立支援に取り組む団体を応援する助成制度(2014年10月創設)。
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