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全原発廃止など共通点多い立憲民主党案と原自連案

1月2日、立憲民主党が次期通常国会に「原発ゼロ基本法案」を準備していると報じられた。久しぶりに明るいニュースに接し、脱原発法案がこの1年を通した話題となると確信した。





続いて、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」が10日に記者会見を行ない、独自の脱原発基本法骨子案を発表。「全ての原子力発電の廃止及び自然エネルギーへの全面転換の促進に関する基本法」という名称になっている。原自連は昨年4月に発足した団体で、会長に吉原毅(城南信用金庫顧問)、副会長に中川秀直(元自民党幹事長)ら、事務局長に河合弘之(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)、顧問に小泉純一郎、細川護煕と2人の元内閣総理大臣が就任している。記者の質問に答えて、小泉氏は「近い将来、国民の声を聞く首相が出てくるだろう」と自民党の変化に期待した。
記者会見後、立憲民主党内エネルギー調査会(逢坂誠二会長)と原自連との活発な意見交換会が行なわれた。

逢坂議員は、原発ゼロはイデオロギーやスローガンではなく、現実味のある問題となっていると挨拶。条件が整ったからゼロにするのではなく、政治としてこれを目指し、決断することが必要だと強調した。吉原会長は、原発ゼロは国民の願いであり、超党派で進めたいとし、案を読み上げて解説。最後に、原発ゼロ・再生可能エネルギー100%は新しい経済システムの構築であり、経済界も歓迎するはずと強調した。

両案とも、原発の新増設は認めず、すべての原発を廃止、核燃料サイクルからは完全に撤退、六ヶ所再処理工場の廃止を盛り込むなど、共通点は多い。

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再エネについては、100%を目指す点では同じだが、原自連案だけが2030年までに50%、50年までに100%を達成すると年限を明記。ただ立憲民主党も、年限を明記することは考えているので、法には明記したいと返答した。

もう一つ異なる点は、立憲民主案が再稼働を原則認めず、一日も早い原発ゼロの実現としているのに対して、原自連案では稼働中の原発もただちに停止するとしている点だ。即時停止は電力会社への補償などの救済策を前提としている。今や原発がなくても電力不足にはならず国民生活に大きな支障をきたしていないことがわかったのだから、即ゼロを主張すべきだと原自連が立憲民主へ要望した。立憲民主は気持ちは同じとしながらも、今後の課題とした。この点は議論の分かれるところだろう。多くの人たちが納得できる案とすることが重要だ。

世界の潮流は再エネにシフト
大きく乗り遅れている日本

再エネの導入は国民負担が増えるとの声(特に産業界に多い)がある。それに対して河合氏は、海外では再エネの爆発的な拡大により、原発はもちろん火力発電よりもコスト安となっている事実をあげ、世界では原発は時代遅れの技術となり、再エネが利益を産む新たな投資対象になっているが、日本は大きく乗り遅れていると指摘。その原因は技術力ではなく政策障害(電力会社の抵抗と経産省の原発依存)によると断言した。河合氏は映画『日本と再生』の制作者でもあり、世界を回って再エネの現場を見て映像化してきた実感のこもった発言だった。



また、昨年暮れにはNHKドキュメントが「脱炭素社会の衝撃」を放映。世界は再エネを中心とした社会へと大きく変わっており、日本がこの潮流から大きく取り残されようとしている姿をあぶり出していた。
1988年に高木仁三郎氏(原子力資料情報室前代表)は脱原発法制定運動を提案し、2年間で350万筆の署名を集めて国会請願を行なった。この時は実を結ばなかったが、30年を経てようやく実現の兆しが見えてきた。
立憲民主党は、3月の法案上程を前に、さらにブラッシュアップした骨子案を提示し、多くの人と開かれた場で議論をして決めていきたいとしている。(伴 英幸)

立憲民主党第2回エネルギー調査会:https://cdp-japan.jp/news/798


(2018年2月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 328号より)


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/


「激変する世界ビジネス “脱炭素革命”の衝撃(NHKスペシャル)






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