関電の使用済み核燃料、フランスで再処理へ。莫大な費用は消費者に転嫁される!?

プルサーマルの使用済み核燃料をフランスで再処理する方針を、電気事業連合会、使用済燃料再処理機構(NuRO)、関西電力などが6月12日に公表した。

再処理費用は莫大な金額に 
福井県との約束の辻褄合わせ

それらによれば、使用済みプルサーマル燃料の再処理を「実証研究」と位置付け、電気事業者がこれを日本原燃と日本原子力研究開発機構(JAEA)に委託する。この両者はフランス・オラノ社に実証研究を再委託する方針だ。一方、実際の再処理等はNuROがオラノ社に委託する方針と複雑な構造になっている。燃料輸送は2020年代後半に、再処理は30年代初頭に実施するとしている。また、再処理で回収したプルトニウムはプルサーマル燃料に加工して日本へ返送、搬出元の原子力事業者が使用する。

輸送及び再処理量は使用済み核燃料200tで、うち10tが使用済みMOX燃料、190tが使用済みウラン燃料である。これらを混合して再処理する。今回の200tはすべて関電のものだ。

関電は福井県からかねてより使用済み燃料の県外搬出を強く求められていた。「2023年末を最終期限として取り組む」としていた県外搬出への道筋が、フランスに搬出することによって、「知事への約束はひとまず果たされた」としている。そして、「今後、必要に応じて適切な規模に見直していく」と将来の拡大を視野においている。

今回の動きは、5月3日に行われた西村康稔経済産業大臣とフランスのパニエ=リュナシェ・エネルギー移行大臣とのトップ会談で決まったと考えられる。福島原発事故の影響からフランスの原子力産業アレバ社は経営危機に陥り、核燃料サイクル部門をオラノ社として再編した。厳しい経営環境にあると伝えられているオラノ社を救済するための契約ではとの疑念が湧く。そのような事情が背景にあることから、関電が支払う再処理費用とMOX燃料加工費用は莫大な金額に跳ね上がるのではないか。さらに、JAEAは廃炉となった「もんじゅ」や「ふげん」の燃料をオラノ社で再処理する救済計画も進行中だ。

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さらに増す余剰プルトニウム
六ヶ所村、27回目の完成延期

余剰プルトニウム問題もある。フランスには約14tのプルトニウムが貯蔵されている。現在、プルサーマルを実施できている電力会社は九州電力、四国電力、そして関西電力の3社で、原子炉としては4基である。2010年には16〜18基でプルサーマルを実施としていた計画はとうに消え、30年までに12基で実施との計画も達成できそうもない。この問題を棚上げにして、さらに追加再処理契約でプルトニウムを増やすことは、余剰プルトニウムを保有しないとする国際公約に反する行為である。

電気事業連合会は、フランスでの実証により「原子力事業者として、将来の日本の再処理技術確立に大きく寄与できるものと考える」と再処理を正当化しているが、そもそも青森県六ヶ所村の再処理工場は完成目標とする時期が27回目の延期となり、原子力規制委員会の審査にも時間がかかると見込まれ、日本原燃が描く24年上期の竣工はとうてい望めない。

関電が、福井県との約束の辻褄合わせのために、新たな海外再処理に進むとすれば、これ以上愚かなことはない。正式な契約はこれからのようだが、辻褄合わせに投じられる大盤振る舞いの再処理等費用が消費者に転嫁されることに憤りを覚える。この政策は、再処理技術、コスト、余剰プルトニウムと、どの観点から見ても合理的で正当な理由がなく、撤回すべきだ。(伴 英幸)

(2023年8月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 460号より)

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけに、脱原発の市民運動などにかかわる。著書に『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
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