まじめに働いてきたKさんがホームレス状態に至った実体験から「ホームレス問題」を学ぶ/ビッグイシュー、豊島高校へ出張講義

有限会社ビッグイシュー日本やNPO法人ビッグイシュー基金では、教育機関や各種団体などに出張して講義をさせていただくことがあります。
今回の行き先は大阪府立豊島高校。ここ数年、「テーマ別人権学習」の講師として毎年ご依頼をいただいており、今年もビッグイシュー日本・大阪事務所長の吉田と、京都・西院などのビッグイシュー販売者であるKさんが伺いました。当事者の語りを通じて、自己責任論や貧困の構造を考える授業です。この記事では当日のKさんの体験談をメインにご紹介します。

周囲に翻弄されてきたKさんの波乱万丈な人生

中卒で就職し、家計を支え続けた若者時代…

京都府・阪急西院駅で販売しているKさん(57歳)は、兵庫県尼崎市生まれで、弟が2人いる5人家族に育ちました。
父親はサラリーマンでしたが、Kさんいわく「今思えば、父親はギャンブル依存症だったと思う」とのことで、借金問題で母親とのケンカが絶えず、仕事をやめては住まいを転々とするような生活だったそう。
Kさんは生まれつき足に障害があり、歩きづらさを抱えながらも中学校では好きな女の子の存在を励みにがんばり、卓球部では大阪大会に出場するほどの腕前でした。

中学卒業後は「家にお金がないので働いてほしい」と親に言われ、大手電器メーカーでビデオ製品や電子レンジの検品などの仕事をするようになりました。人間関係もよく、楽しく働いていましたが、当時の給料・ボーナスはすべて親に渡し、弟の高校進学資金も出してあげていたといいます。

電撃結婚するも離婚で家・家具をすべて失い…

長年親に給料のすべてを渡し続けてきたKさんでしたが、次第にその状況に不満を感じるようになってきていました。そんな時、ひょんなことから知り合った女性と、出会って1週間で電撃結婚。
入籍時にKさんの資金で家や家具を購入しましたが、想定していなかったのは義理の両親がかなり独特だったこと。新婚旅行にまでついてきて過剰に干渉されるなどしたため、すぐ離婚することになってしまいました。そして離婚協議のの結果、相手方に家や家具をすべて渡してしまい、住む家を失ってしまいます。

「1週間で結婚を決めたらあかん」と苦笑いするKさん。

そうしてホームレス状態になってしまいましたが、この時はサポート団体の支援により東京で仕事を探せることになりました。

再就職先が火災で倒産、再びホームレスに…

東京での就職活動の結果、寿司屋を経営する社長の元で就職をしましたが、社長が「寿司屋とは別にたこ焼き屋をやりたいと思う」と言い出し、たこ焼きに詳しかったKさんが晴れて店長を務めることに。たこ焼き屋をオープンさせ、一人で朝から晩まで働き、一日に30万円くらい売り上げ、寿司屋より儲けがあったと言います。

しかし…。その社長がさらに別の寿司店を出店したところ、そこで火災が起きてしまいました。その結果、会社が倒産してしまったのです。Kさんは再び仕事を失い、再度大阪に戻り、ビッグイシューの販売を始めました。

「ビッグイシューの仕事をすることで、食べていけるし、お客さんからも頑張ってね、と声をかけてもらえたり、差し入れをいただけたりすることも嬉しい」というKさん。

現在は、ビッグイシューの販売でアパートに入居できています。いずれは、たこ焼きやお好み焼きのお店を出すことを目標としていると語りました。

高校生からの質問

吉田より「何でも聞いていいよ!」と促したところ、高校生から率直な質問をいくつかいたただきました。

Q
友達はいますか。どんな話をするんですか。
A

ホームレス状態になっても、周囲の人と友達になったりすることはありますね。ビッグイシューの販売者の友達もできました。
友達の中にはビッグイシューの販売をしていない人もいて、その人から「仕事がない」と相談を受けて、ビッグイシューを紹介したこともあります。

Q
ホームレス状態で一番大変なことは何ですか。
A

なんせ住むところがないので、冬は寒い、夏は暑い。そしてつらいのは盗難。貴重品を寝てる間に盗まれてしまうこともあり、ぐっすり眠ることができません。

Q
病気になったらどうするんですか。
A

市役所や支援団体に相談したら、無料で医療を受けることができる仕組みがあるので、困ったときは相談しています。

Q
たこ焼き屋はどこでやりたいんですか。
A

激戦でも商店街かな。出汁も焼き方もノウハウに自信はあるんです。

高校生へのメッセージ“今は、未来のあなたを作る大切な時間”

最後にKさんは、準備してきた高校生へのメッセージの手紙を読み上げました。

自分自身と向き合う時間を持ちましょう。
周りの人とのつながりを大切にしてください。
心と体を大切に、広い視野を持って未来を想像してください。
高校生の皆さんの今は、未来のあなたを作る大切な時間です。
焦らず自分らしく、一瞬一瞬を大切に楽しんでください。

読み上げ終わると、生徒さんから大きな拍手がわきました。

出張講義では、体験談のほかにホームレス問題の原因となる社会構造などについても解説しました。

高校生のアンケートより『自己責任だと思っていた認識が変わった』

授業後に取ったアンケートでは、「イメージが変わった」「気づき・学びがあった」など、多くの生徒から『自己責任だと思っていた認識が変わった』という声が多く寄せられました。

「人ごとではないと思った」
「必死に生きようと努力していることに応援したいと思えることができた」
「(Kさんが)自分たちと同じ年の時にはいろんな人のことを考えて生きていることに深く感銘を受けました」
「ホームレスになるのは自業自得なんだと思っていたけれど、(今回の授業を受けて)必ずしも本人のせいなのではなく環境や状況でなすすべがなくなってしまうことが多いことや、一度ホームレスになってしまうと簡単に働くことができない状況の方が多いことを学べました」
「自分もホームレスになる可能性はある。けど『楽しむ』ことも大切だから、まず失敗してでもいいから自分の目標をつらぬくことが大切だと思いました」

格差・貧困・社会的排除などについて出張講義をいたします

ビッグイシューでは、学校その他の団体に向けてこのような講義を提供しています。
日本の貧困問題、社会的排除の問題や包摂の必要性、社会的企業について、セルフヘルプについて、若者の自己肯定感について、ホームレス問題についてなど、様々なテーマに合わせてアレンジが可能です。

小学生には45分、中・高校生には50分、大学生には90分講義、またはシリーズでの講義や各種ワークショップなども可能です。ご興味のある方はぜひビッグイシュー日本またはビッグイシュー基金までお問い合わせください。
https://www.bigissue.jp/how_to_support/program/seminner/

参考:灘中学(兵庫県)への出張講義「ホームレス問題の裏側にあること-自己責任論と格差社会/ビッグイシュー日本」

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