日本の小・中学生のうち、「不登校」(*1)の児童は全体の1.4%にあたる134,398人(*2)。その割合は年々じわじわと増えている。(*3)
*1: 年度間に連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒数のうち、何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし,「病気」や「経済的理由」による者を除く。)をいう
*2・3: 文部科学省 平成28年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果(速報値)より)

不登校の要因は児童により様々だが、学校起因の要因としては友人や教師との人間関係、学業の不振、環境が変わったことへの不適応などが挙げられる。(下図)

学校に行く・行かないは本人の自由という意見もあるかもしれないが、「行きたくても行けない」状態にある場合は問題であろう。とはいえ、一人ひとりの不登校の要因を解決したくとも、30人近い生徒を受け持っている現状の小・中学校の教師が指導要領に沿った指導をしながら、一人ひとりに目を配るには限界がある。
生徒だけでなく地域のみんなの居場所でもある“みんなの学校”、大空小学校
そんな状況の打開のヒントになるのが、『ビッグイシュー日本版』333号に登場する「大阪市立大空小学校」かもしれない。
ある不登校だった児童が300校のホームページを検索したなかから選び、無欠席で卒業したという学校だ。
映画やテレビドキュメンタリーにも取り上げられるなど、日本でも最も有名な小学校の一つで、「みんながつくる みんなの学校」を合言葉に、教職員、保護者、卒業生、地域の人など、大勢の人がつねに学校にかかわり続けている。

大きな特徴の一つは、学校内につねに教職員以外の大人がいること。授業中の教室で子どもの学びをサポートしたり、学校図書館で本の整理をしたり、休憩時間に手芸講座を催したり……。授業参観もいつでもOKだという。
実際に地域のおじいちゃんが読み聞かせを手伝ったり、近隣の家具工場の職人さんたちが木工教室を開いてくれたり。
また、小学校5年生向けの希望者を対象にした週2回のプリント学習の講師を務めるのは高校生や大学生になった大空小の卒業生。卒業すると小学校とは接点がなくなってしまう卒業生の“居場所”としても機能しているのだ。
大空小では、子どもたちのトラブルがいじめへと発展しにくいという。「そうなる前に子供の変化に誰かが気づき、先生も子どもの話をしっかりと聞くので、陰湿ないじめに発展しにくいのかもしれない」と大空小のはぐくみネットコーディネーター(地域と学校をつなぐ役割を果たすボランティア)の女性は話す。
講演などで取り組みを紹介すると、「こんなの、大空小学校が特別。大空だからできるのよね」と言われることも多いそうだが、大空小学校は公立の学校で、特別な学校というわけではない。学校で立ちあがる人さえいれば、公立でもできることはたくさんあるのだ。
そんな大空小学校の、「たったひとつの約束」とは? また、学級という枠を取り払い、ひとりの児童を全教職員でみていく学校運営の様子や指導の工夫とは。詳しい紹介は本誌333号をご覧いただきたい。
参考映画:「みんなの学校」
『ビッグイシュー日本版』333号特集では、自主夜間中学のボランティアを務める前川喜平さん(元文部科学事務次官)に、これまで文科省で取り組まれてきた教育行政の経験と教育行政の変遷、これからの教育と社会についてインタビュー。

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