[この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています]
地域の企業や農家から仕事の依頼を受け、「ジョブトレーナー」がニートやひきこもりの若者たちとともに仕事に出かけることで、中間的就労の場を確保する一般社団法人栃木県若年者支援機構「しごとや」。栃木県宇都宮市にある拠点を訪ねた。
しごとやの取組みを広げるために制作した中間的就労に関する書籍。
中古車クリーニングや農作業、多様な就労現場を組み合わせ本人の能力を引き出す
「しごとや」理事長の中野謙作さんは1999年に前身団体を立ち上げ、若者のフリースペースやフリースクールづくりに尽力してきた。今では若者サポートステーションや子ども若者・ひきこもり総合相談センターなどを入り口に、中間的就労体験、3ヵ月の集中訓練プログラム……と段階を追って若者に力をつけ、就労へと結びつける。
「求人はあっても、求められるのは『即戦力』でブランクがある若者がいきなり就労するにはハードルが高い」と中野さんは言う。そこで力を入れるのが中間的就労「ユニバーサルデザインジョブ事業」の仕組みだ。15~39歳くらいまでのニートやひきこもりの若者3人と、彼らの適性を引き出すジョブトレーナー1人がチームとなり、仕事場へ向かう。
スタッフの西根宏行さんによれば、仕事は地元企業や農家から作業を受託、内容は「中古車のクリーニング、遊技機の部品を梱包するダンボール箱の組み立て、リサイクル家電の仕分け、マンション共用部の清掃、農家の除草作業や収穫の手伝い」など、さまざまだ。
「訓練を受けるには入会費5千円と、半年ごとに登録料が必要ですが、訓練の参加回数に応じて訓練奨励金を支給しています」
現在ジョブトレーナー5人のうち3人は「かつて支援を受けていた、ひきこもりなどの経験者」だという。
現場のべ400件、15人が就労。ジョブトレーナー研修に7県から参加者
昨年1年間の現場数は、延べ400件。15人の若者が就労に至った。
「中学の頃から20年近くひきこもっていた30代半ばの男性は、会話が苦手なのですが、どんな作業も断らず、私たちも頼りにしていました。訓練参加1年後に建設会社に就職。今では自分で車を運転して太陽光パネルの設置に行っていて、現場では親しみを込めて『親方』というあだ名で呼ばれているそうです」
また、20代半ばの男性は知的障害が疑われたため、「最初はほかの施設へつなぐつもりでしたが、車が大好きな彼は中古車の洗車作業に興味を示し、まじめに通ってくる。そこで2年近く根気よく手順を教えたところ習得し、研修先企業にアルバイトとして採用された」という。
中古車の洗車作業のほか、農家さんの手伝いや個人宅の除草作業など様々な仕事 現場を体験できる。
中央ろうきんの助成金は「ジョブトレーナー育成費の一部と若者が自宅から通う交通費や昼食代、作業に必要な道具の購入費に充てられ、彼らが親の負担に頼らず、自立への一歩を踏み出すのに役立っている」と話す西根さん。そして中野さんは、次なる展開についてこう言う。
「地域の企業や農家が仕事に対してお金を払い、同時にそれを若者の就労訓練として活用する、誰にも負担のかからないこの仕組みを全国に広げたいと考え、6月にジョブトレーナー研修を行いました。全国7県から、若者支援団体の職員など7人が参加。今年度中に、あと3回実施する予定です。地元の人々の協力のもとに就労できる若者を増やすためにも、今回、助成を受けたことをきっかけに、この仕組みをより広く知ってもらい、さまざまなかたちで参加いただけることを期待しています」
中野謙作さん、山崎宏さん、塚本竜也さん、西根宏行さん
一般社団法人栃木県若年者支援機構(愛称:しごとや)
1999年から若者の就労支援を開始。2010年に法人化、子どもや若者のSOSに呼応し活動している。
★宇都宮市内の仕事依頼、栃木県在住の登録生募集中。
★次回のジョブトレーナー研修(平成28年2月)参加者募集中。
お問い合わせ先
TEL 028-678-4745
http://tochigi-yso.org/