ドイツ・ドルトムント拠点のストリートペーパー『bodo』の呼びかけにより、ドイツ語圏で発行されているストリートペーパー20紙を代表するスタッフ70名*が一同に会した。ホームレス問題への取り組みにおいてINSP(国際ストリートペーパー・ネットワーク)が果たすべき役割、右傾化と社会事業の費用削減が進む昨今、独立系ジャーナリズムと社会事業が直面する課題について、2日間にわたり議論を交わした。

*代表、編集者、販売サポート、ソーシャルワーク職、ボランティア、販売者、ツアーガイドなどを含む。
同じ課題に取り組む人々が状況をシェア、知恵を出し合う
INSPとは、日本を含む世界35カ国、92のストリートペーパー事業を束ねる組織で、記事の共有をはじめとするさまざまな連携が実施されている。ドイツ語圏を取りまとめるネットワークも、その中で重要な役割を果たしている。
基調講演では、ドルトムント地域・都市開発研究所(ILS)のマイケル・コロチェク博士のチームが、現在進めている研究プロジェクト「MaBIs(Marginalised Population Groups and the Solidarity-Based City Centre)」について発表した。このプロジェクトでは、社会の中で孤立したり、排除されやすい人々も含め、誰もが過ごしやすい都心のあり方を研究している。
調査には、ストリートペーパー『bodo』と、ミュンヘンで発行されている『BISS』の販売者や、ホームレス経験のあるスタッフも「当事者研究者」として参加。ILSの研究者と協働しながら、都心部で起きている変化を調べ、連帯をベースとした都心空間のあり方を考察している。
『bodo』の販売者95名を対象に、仕事や顧客との関係性、生活状況に関してインタビューした結果についても発表された。研究プロジェクトでは、ストリートペーパー6紙の記事を分析し、ストリートペーパーというジャーナリズムにおける政治に対する批判と関与という「バランスの保ち方」についての知見も共有された。

各紙は、販売者が置かれている厳しい状況に光を当てつつ、販売者への共感・親近感を促すことを目指している。物乞いをせざるを得ない状況を踏まえつつも、ストリートペーパーの販売活動と物乞いの違いについても強調する場面があった。

その後、本会議の核となる15セッションから成るワークショップが行われた。先述のプレゼン発表の内容に加え、ストリートペーパーを取り巻く昨今の動きーー業務での連携、デジタル決済システムの導入、ソーシャルツアーや学校でのワークショップ開催などのアウトリーチ活動、ホームレス状態にある人々や難民を対象としたソーシャルワークの実践事例などのトピックーーについて参加者たちが議論を交わした。
社会課題を解決する非営利団体ならではの連帯
スイスのストリートペーパー『サプライズ』の編集者で、本会議の共同主催者でもあるサラ・ウィンターは、「この年次会議は、私たちストリートペーパーの発行元が、運営ノウハウや優れた実践事例を共有し合う、事業者ネットワークのような場です。ただ一つ異なるのは、私たちは自分たちの利益や業務効率化のためではなく、貧困に立ち向かう社会運動を共に推進するために行っているという点です」と述べた。

会場となったのは、非営利団体bodoのパートナー組織である「KoFabrik」のコミュニティホールだ。以前はbodoがドロップイン・センター(誰もが気軽に立ち寄れる居場所)を運営していた場所だが、その後、地域密着型のコミュニティセンターに改修された。

また、会議参加者への軽食や飲み物の提供には、ドイツ・ウクライナのイニシアチブ「トゥルボタ(Turbota)」などが協力した。「Stadtzimmer Neuland」で開催された交流パーティーでも、参加者たちはストリートペーパー事業の未来を見据えた話題で盛り上がった。

ノルウェーのストリートペーパー『Erlik Oslo』および『Sorgenfri』の代表で、INSPの理事を務めるヴィゴ・マスタッドは、「今回の刺激的かつ滞りなく運営された会議からも、ドイツ語圏のストリートペーパーがINSPネットワークにおいて大きな役割を担っていることは明らかです。私たちが直面している社会的・政治的危機に対する答えは確かにあるという充実感とともに、帰路につくことができます」と語った。

『bodo』が年次会議の主催を務めるのは初の試みだったが、大きな成果とともに幕を閉じることができた。『bodo』のマネージング・ディレクターのターニャ・ヴァルターは、2日間のイベントを次のように総括する。「非常に実りある会議を開催でき、参加者は皆、新たな刺激を得たことでしょう。社会的に弱い立場に置かれた人々のために、より公正な社会、より良い生活の実現を目指すという気高い使命感を持って、異なる都市で活動する方々と共に議論できたこの経験は、私たちに力と自信を与えてくれるはずです」
By Bastian Pütter
Translated from German via Translators Without Borders
Courtesy of bodo / INSP.ngo
Photos by Sebastian Sellhorst
参考:2026年9月には、グラスゴーで世界中のストリートペーパーが集まる。
https://www.insp.ngo/articles/street-paper-news/glasgow-to-host-major-global-homelessness-conference
※経済的に厳しい地域で活動するストリートペーパーは、自費での参加が難しいため、スポンサー支援を募集している。
https://hub.insp.ngo/wp-content/uploads/2026/06/INSP-Scholarship-Place-Info.pdf
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