報道によれば、北海道の寿都町と神恵内村が、高レベル放射性廃棄物の処分地の候補として名乗りをあげた。賛否をめぐっては地元をはじめ北海道全体でも大きな問題となっている。北海道では高レベル放射性廃棄物は受け入れがたいとする条例(※)があり、鈴木直道知事は再三にわたって応募を思いとどまるように両町村に要請している。しかし、両町村とも歩調を合わせたように寿都町は10月9日に正式に応募し、神恵内村も同日、政府からの調査申し入れを受諾した(応募と申し入れの2つの方法がある)。
※ 2000年10月に制定された「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」。
北海道知事は両町村に
応募しないよう何度も要請
「尊重する」とは、首長が反対すれば次の段階へ進まない意味だと政府は説明してきた。しかし、これは「撤退」を意味するわけではないため、次段階へ進む可能性が常に警戒されてきた。ここに来て経済産業省は「選定プロセスから外れる」と言い回しを変えたが、なお、警戒心が解けない状態だ。
両町村とも処分地に必要な地下の面積(約10㎢)を確保できそうにない。にもかかわらず受諾した。これらにより2年間の文献調査期間(第1段階)に最大20億円の交付金が落ちる。その次の概要調査期間(第2段階)は4年程度で、最大70億円と金額も跳ね上がる。以降は未定だ。精密調査(第3段階)を含めて、調査期間は全体で20年程度になる。どちらも将来のいっそうの人口減少による財政の逼迫を避けるため、交付金を目当てにした対応だという。
地元では多くの反対の声
住民投票求め署名活動も
そのため、少なくとも数万年は環境から隔離する必要があるが、現実的には困難で、遅かれ早かれ人間の生活環境に出て、長期にわたって被曝が続くことになる。その時の被曝線量を現行基準(1ミリシーベルト/年)の100分の1以下になるように処分場の設計がなされることになっている。しかし、想定外のことが起きたら基準の20倍までは認めるという。そうなれば人間の住める環境ではなくなるだろう。
このような危険な放射性物質を埋めることに対して、寿都町では説明会などを開催したが、議会は開かず片岡春雄町長が判断した。神恵内村では商工会が誘致の請願を提出、村議会での議決の後、政府が申し入れ、高橋昌幸村長が受諾した。しかし、両町村の住民に反対の声は多い。寿都町では住民投票で賛否を決めることを求めた直接請求が、必要数の4倍の署名を集めて提出された。
現行の制度は首長が独断で応募できる仕組みで、これ自体が大きな欠陥といえる。超長期にわたって影響を与え続けることから若い世代の声も重要だ。十分な話し合いのもと住民の総意で次段階調査の諾否を決めていくことが求められる。 (伴 英幸)
(2020年11月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 394号より)
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/